どうも困ってる人を見過ごせない。
別に正義感あふれんばかりに「世のためなら我が身を顧みず」なんて思っちゃいない。ボランティアなんかもしないし、街角の街頭募金でいくら「難病のなんとかちゃんを助けるために」とか「アフリカの子供たちになんとかを」なんてやってても基本スルーする。
でもね、目の前になんか困ってる(困ってそうな)人がいたら、声をかけたりしちゃうのよ。何に困ってるの?何か手助けできる?ってね。こういうのは見て見ぬ振りしても、後でもやもやするくらいなら、その時声をかけたほうが楽だから。
まぁ、親切心で声をかけても俺の格好を見て「なんか変な人」とか「やばいやつ?」なんて感じで「いえ・・・」って断られることもあるんだけどね。別に気にしちゃいない。
大阪メトロと名称を変えた大阪地下鉄谷町線の東梅田駅。
改札を出たところで車椅子のおばあさんが通り行く人になんか声をかけている。でも、みんなスルーして通り過ぎてる。絶対聞こえてるはずなのにね。大阪は人情の街だって言うけど、そうじゃない人もいっぱいいるのよね。
一瞬俺もほっといていこうかなって思ったんだけど、振り返っておばあさんに近づいて行って「どうしたの?」と聞いてみる。一瞬こわばった表情を見せたが、車椅子を押してほしいとのこと。ちょっと先のホワイティとつながるところがスロープになってるから、そこを超えるのを手伝ってほしいそうだ。
お安い御用だ。押してあげるよ。荷物を結構車椅子に吊り下げてるね。かなり重いよ。まるでまだ慣れてない母親が、外出時のあらゆる事態を想定して、用心のためにといろいろ用意してしまってめっちゃ重たくなってるベビーカーみたいだ。この重たさだと手で車輪を回すのも一苦労だし、疲れるだろう。
言われたスロープの所まで来たけど、このあとどうするんだろう?
「どこまで行きたいの?よかったら押して連れてってあげるよ」
おばあさんは恐縮されたのか、最初は断ったんだが、「ええよ、暇やし、どこまで?」というと「じゃぁ、お願いします」と。目的地は?えっ?大丸。近そうで遠いぞ。
さて、困った、地上ならともかく、ここは地下だ。エレベーターで一度上に上がるという手もあるが、地下で大丸まではどう行けばいい?慣れてない人は迷ってしまうほど複雑で「ダンジョン」と異名をとる梅田地下街。頭の中でルートを考える。一瞬でルートを3つほど割り出し、最短は阪神百貨店の横を通り、ぐるっと回り込む形で行くルートを伝えると、それでいいとのこと。おばあさん、梅田地下慣れてるのか、それともよくわからないからお任せされたのかわからないがとりあえず進もう。
しばらく押して歩くと汗が出てきた。よくよく考えたらこんなに長い時間車椅子押したことないな。病院とか電車の入り口とかそれくらいだ。
しかもこんな人ごみの中。革ジャケ脱ぎたいけど手がふさがるしなぁ。さらに俺はなで肩だから、前かがみで車椅子押してるとショルダーバックがずり落ちる。その度に片手運転にして直すのが面倒くさくなって、斜めがけにした。ちょっとお茶目だな。誰かに会いませんように。
サングラスかけて革ジャケ革パンで車椅子押してる姿がショーウィンドウに映る。
ちょっと異様だな。通りすがりの人はどう思ってるのかな。まぁ気にするこっちゃないけど。
梅田の地下街って普段はあまり気にならないけど、やっぱり上り下り多いよね。地下水とか陥没のせいで変なところに段があったりするのは知ってたけどね。だから段差や階段のない、スロープ化されてるるーと使ったんだけど、それでも結構登り道だったり降ってたり。こうやって車椅子を押してるとよくわかるね。
電動車椅子ならさておき、普通の手で車輪を回す車椅子なら結構大変だ。しかも車椅子使ってる人って、病気で不自由だったり、老人で腕力落ちてる人が多いわけだからね。こうやって押してるだけでも腕がだんだん突っ張ってくるのがわかる。持ち方やポジションが悪いのか、腰もだんだん痛くなってきたぞ。昔アルバイトで工事現場で砂を運ぶのに使ったネコ(三輪手押車)を思い出した。
なんやかんや世間話してたら、大丸の入り口に着いた。
何度も礼を言うおばあさんに、ええからさっさと中に入りや、照れくさいわ。
でもその時思ったのよね。阪神百貨店もそうだったけど大丸もドアは自動ドアではなく押したり引いたりして開けるガラス戸なのね。しかも大きくて重たい。自動ドアではないのは防犯とか省エネとか危険性のためなのかよくわからん。観音開きの半分を空けてあるのでいいが、もし両方閉まってたら車椅子の人やベビーカーを押してる人は不便だろうなぁ。入れたくないのか?
今年は何人の観光客がとか、海外からこんなにやってきてインバウンドだぁとか、サミットが、万博が、なんて言ってるけど、もう少しこういうところは考えなきゃいけないのじゃないかね。どうだろ、松井市長、吉村知事。
いきなり話は変わるが、4月19日から始まった新ドラマ、『執事 西園寺の名推理2』を観る。上川隆也がなんでもできるパーフェクトな執事を演じ、佐藤二朗演じる刑事とともに(というか完全に出し抜いて)毎回事件を解決するドラマだ。
執事が仕える奥様の役は、前回は八千草薫さんだったのだが闘病のため降板されたので、今回は設定そのままに吉行和子さんが演じる。
上川隆也のスーパー執事っぷりは今回もすごい。初回はイリュージョンショーでの事件だったのだが、上川隆也本陣も手品師のようにトランプさばきはするわ、舞台トリックは暴くは、最後は犯人が消えるマジックで逃亡を図るが、上川も同じ消えるマジックをして(する必要はないのだが)追いかける。
で、このパーフェクトな執事・上川隆也が吉行和子の乗った車椅子を押すシーンがエンディングであったのだが、まぁ凜としてること。かっこいい。
そうか、背筋伸ばしてもっと体を車椅子に近づけて押したらよかったのね。残念。このドラマ観た後だったらもう少しまともに押してあげられたのにね。まぁ、いいか。
いいことした後はなんかいいことがあるもんだ。宝くじでも買おうかな。なんて地元の駅降りて思ってたら、100円玉を拾った。しかも昭和50年の刻印が。
どうやらこれが今回のいいこと報酬だったみたいだ。
車椅子押し賃、約10分100円也。Timesの駐車料金並み。